木陰に覆われるこの道は、夏は強い日差しを遮り、冬は雪が積もるのをいくぶん防いでくれる。道の真ん中に蛇が横たわっていることもあるし、猿や鹿やリスが横切る時もある。毎朝「いってらっしゃい」と子供を見送る。集合場所まで距離がある我が家は、低学年の時は犬の散歩がてら一緒に行ったり、間に合いそうにない時や大雨の日は車で送ったりもした。高学年になった最近は、家の前から見送ると、元気よく走って坂道を駆け下りてゆく。かなり速い。あっという間に見えなくなる後姿。帰りはずっと上り坂で、低学年の時は、途中で何度も休憩しながら、また寄り道(小川に入って遊んだり)しつつで、ものすごく時間がかかっていた。車で仕事から帰ってくると、道の真ん中に子供が寝そべっていてギョッとしたこともあった。道の途中に、クレヨンや、色鉛筆や、算数セットのバラバラが点々と落ちていたことも。学期末の荷物を入れた紙袋を引きずって穴があき、無造作に入れた道具が道しるべになっていたのでした。毎日この坂道を通ううち、重い荷物もしっかり持てるようになり、鍛えられて、丈夫になってゆく。