「神の子供達はみな踊る」村上春樹

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

阪神大震災の後に 地震をキーワートに書かれた連載小説。その5編にもうひとつ書き下ろし短編が加えられている。

あとから加えられた1篇は 他の5編と違って 明るい希望が描かれている。
それがないと あまりに救われないままかもしれない。

でも どこかそれが空々しいように 少し感じてしまったのは 最近の大地震によって 変化した感覚のせいなのか。

5編の話しは あるがまま ぽん と その世界へほうりだされたまま 終わっている。
でも 私は そこにもちゃんと救いはあると感じたし そのほうが ほんとうだと 思った。

P173 「何かをわかっているということと、それを目に見えるかたちに変えていけるということは また別の話しなのよね。」

わかっている ということと それを かたちに変えていける その間には 時としてものすごく
おおきな越えられない壁のようなもので隔たれられていて、その壁の果てさえ見ることができない。

(壁といえば 村上春樹がインタビューで 壁側ではなく 壁にぶつけられるられるタマゴでありたい
と 話していたな。)

それでも なんとか わかっているから、わかってしまったからこそ、その壁を越えて 
または破壊して または 透視するようにすんなりと通りぬけて 向こう側へたどり着きたいと思う。

壁に手をあてて押すと 同じ力で押し返される。作用と反作用。
壁の前では、自分がぶつかる力で自らを破壊してまうことにもなるかもしれない。

そこから先へ進める方法を 考え続けている。