よるくま 酒井駒子

よるくま

よるくま

酒井駒子は、この児童書の挿絵に惹かれたのが最初でした。

オオカミ族の少年 (クロニクル 千古の闇 1)

オオカミ族の少年 (クロニクル 千古の闇 1)

児童書に描かれている絵にはすごく惹かれるものがあったが、この絵本の表紙を見たときは
ただ可愛らしい雰囲気だけの印象だったので 手に取らなかったのでした。

でも。そうではなかった。

この絵本は可愛らしい、おはなし、として仕上げてあるけれど、ほんとうは 深い恐怖と悲しみを、そしてそこから
救われたい切実な願い、想いが描かれていると思う。

男の子が1人でベッドで眠ろうとしている。でもなかなか眠れなくて 起きていたのでしょうね。
お母さんに「まだ おきてたの?」と言われてしまう。そこで男の子は くまのこが訪ねてきた話しを
お母さんに語り始めます。
「あのね、きのうよるね、うんとよなかに かわいいこが きたんだよ。」
お母さんがいなくなって、探しにきたよるくま。
男の子はよるくまと一緒によるくまのお母さんを探しに出かけます。
このときの くまのこの愛らしさ、そしてその小さな胸は不安でいっぱい。
今にもあふれ出しそうな悲しみが胸に迫ってきます。

あちこち探しにいくけど
どこにもお母さんはいない。探しているくまのこの小さな後姿が切ない。
そして、とうとう、こらえていた悲しみがあふれ出し、くまのこは、なみだを流して
泣き出してしまう。
よるくまの涙は 真っ黒。どんどんあふれる涙で あたりはどんどん暗くなり 真っ暗闇に。。

真っ暗闇の中 「たすけて ながれぼし!」
そう叫んで 流れ星をつかむと、それは くまのおかあさんの釣り糸に繋がっていたのです。
ながれぼしにつかまって くまのこと男の子は くまのおかあさんのもとへ。
このときの くまのこの泣きながらお母さんを見つめる横顔は、全身全霊で救いを求める
無防備でいたいけな、思わず抱きしめたくなる幼子の姿。
くまのこを抱きしめたおかあさんくまは、
「ああ、あったかい おまえは あったかいねえ」
全てをゆだねて、身をあずけてくる幼子を抱くとき、抱きしめる方も、あたたかく包まれる。
くまのおかあさんは「あしたになったら、おさかなをやこうねえ、バスにのって いこうねえ」
あしたの楽しみな話しをきかせながら
 「きょうは もう お や す み」

この おかあさんの言葉があるから、安心して眠ることができる。

幼い子供のおはなしではあるけど、人は このよるくまと同じ思い、願いを、大人になっても
持っているのではないか。真っ暗な中で見つけた流れ星によって 明日へつながる力を得ることができる。

この絵本にはものすごく押さえてあるけど、酒井駒子のほんとうの魅力が隠されている。。と
今読んで思いました。