海のふた

海のふた (中公文庫)

海のふた (中公文庫)

故郷の西伊豆に帰って、大好きなかき氷屋を一人ではじめた主人公まり。寂れてしまった街を、自分のできることでなんとか良くしていきたいと思いながら。そこへ、心に傷を負ったはじめちゃんが、ひと夏やってくる。
自分らしく生きる道を探す女の子二人の物語。

まりの、故郷に対する想いや、自分のお店のあり方へのこだわり、共感する部分は多くあった。今若い人たち
自分でお店をはじめるのは、こういう思いでやっている人が増えているように思う。

二人が男と女の違いについて話すところで「男は暗くて深いものを求めてどんどんいってしまい」
「女は毎日の中で小さな光をつくる」と二人が話していたが、これは男女の違いでなく、そういう2種類の人間が存在するんじゃないかな。

「この世が作った美しいものをまっすぐな目で見つめたまま、目をそらすようなことに手を染めず 暮らすこと
それは不可能なことではない、人間はそういう風につくられてこの世にやってきた」
こう信じて、主人公の2人は生きて行こうとする。西伊豆の海で泳ぎ、浄化されながら、日々を重ねてゆく。
20代頃読んだならすごくぴったりきただろうなと思った。今はちょっとその先にきてしまって
懐かしい思いで読めました。