とかげ

とかげ (新潮文庫)

とかげ (新潮文庫)

吉本ばななは、もうずいぶん前、話題になっていた頃「キッチン」は読んだけれど、
あまり好きになれなくて、それからずっと敬遠していた作家でした。
その後時折目に付いた作品を手にとってみたこともあったけど、パラパラ見てはやっぱりやめようって思ってしまっていました。
去年あたりに「アルゼンチンばばあ」は読んだけど、(映画が紹介されてたのを見て)あまりなんとも思わなかったのでした。
今回の本は文庫本だったし、短編集なので時間待ちにちょこっと読めるかな?軽い気持ちで借りてみたのですが、
一話目の「新婚さん」読んでみて、あれ、もしかして読んだことがあったかもしれない、という気もしたが、読み始めていちいち言葉が刺さってくるように感じたのでした。別に新婚ではないんだけど。
他のいくつかの短編も、それぞれ揺さぶられるものがあった。ああ、もう読み終わってしまう、って思うくらいに。あとがきに「時間」「癒し」「宿命」「運命」についての小説です、とあった。
そういうことでなのか、ここに収められていた話は、どれも染み入ってきてしまいました。こういうのって作品自体のすごさがあるからだろうけれど、こちら側の受信ができてないと、素通りしてしまうものなんだろうな。でもすでに今、どこがどう刺さってきたのか、思い出せなくなってきている。本を手元に読み返しているのに。ただの通過してしまうだけの作品ならそんなことはあるだろうけど、確かにこれはそうではなかった。なんだか不思議な状態になってしまった。他の作品もまた読んで確かめてみようか。