カンランシャ 

カンランシャ

カンランシャ

本との出会いは不思議です。この作者についてはまったく知らなかったのですが(135回芥川賞受賞の作家)図書館で本の貸し出し手続きを待っている間、その横にある返却された本の棚に目をやると黒い背表紙のこの本が目に付いて手にとったのです。
帯に「誰かを好きになってしまった人間という動物の愚かしくも愛しさに溢れたありのままを描く・・」とある。2組の夫婦うち3人が語り手になって話がすすめられてゆく。その心象描写がそれぞれにとてもうまく重なり合って、どんどん引き込まれていった。美化せず、型にはめず、ありのままの真の姿・・だと思えた。だからこそ、心揺さぶられるものがあった。細かい部分・・なんでもないところにもそれが滲み出ていてて思わずうなってしまうのでした。上滑りで思い込みな恋や、どろどろと作りものめいた愛の話ではない、描こうとしたものを感じられた。早速受賞作も読んでみようと思った。